~「食べる」ことも、子どもにとっては大切な経験~
チャレンジクラスの5月のテーマは「青森」。
メニューは、郷土料理の
「せんべい汁」と「十和田のバラ焼丼」でした。

せんべい汁には、しいたけとこんにゃくが入っています。
下ゆでの段階で、ある子が顔をしかめて言いました。
「うわぁ、変な臭い…」
「しいたけも臭いから嫌い!」
こんなことを言われると、つい
「そんなこと言わないの!」とか
「しいたけはいい香りやけどなぁ」
と言いたくなっちゃいます。
何でも嫌がらずに食べるのがよい子、
みたいな固定概念ありますよね。
でも「嫌い」という言葉の奥には、
実はいろんな理由があるんです。
「残してもいい?」その時どうする?
試食の時間になっても、
その子はなかなか箸が進みません。
「どうしても無理だから、残してもいい?」
と聞いてきました。
半分以上が手つかずのまま。
さあ、どう声をかけたらいいのでしょう?
無理やり食べさせたくはない。
でもチャレンジしてほしい。
そう葛藤していたその時でした。
参加者のひとりが何気なく言いました。
「鼻つまんで食べたらいいんちゃう?」

え?それっていいの?
それって無理やり食べさせることにならない?
そこまでして食べなくても…
と正直思っちゃいました。
子どもたちの実験タイムがスタート!

しかし、そこからは、小さな実験が始まりました。
目隠しをして、鼻をつまんで、
あるものを口に入れてもらいます。
「なにこれ?」
「甘い?」
「うーん、わからへん」
そして鼻を離した瞬間——
「うわぁ~!!」

実はその“あるもの”は、
シナモンシュガー。
鼻をつまんでいる間は、
味の輪郭がぼやけていたのに、
嗅覚が戻った瞬間、
甘くスパイシーな香りが一気に広がったのです。
私も一緒にやってみましたが、
本当に違うんです!
においって、こんなに味覚に影響しているんだ…
と改めて実感しました。
「味わう」って、感覚のかけ算なんだ!
この体験から、子どもたちは気づきました。
味を感じるって、舌だけじゃない。
目で見て、鼻で嗅いで、
いろんな感覚を使っていたんだね、と。
「臭いが嫌い」というのも、
においという感覚をちゃんと使っている証拠。
それを理解できたことは、大きな学びになりました。
そして、その子は…完食!
実験をきっかけに場がほぐれ、
みんなが声をかけたり見守ってくれたり。
「ちょっとだけ食べてみようかな」
そんな気持ちが、その子の中にも生まれていました。

結果、せんべい汁を完食!
空っぽのお椀を見て「食べたね~」
と声をかけましたが、
感動で泣きそうになるのを抑えるのに必死でした。
いやぁ、ほんとにうれしかったんです😭
その子も「食べられた!」という体験が、
きっと自信にもつながったと思います。
偏食には、ちゃんと理由がある
偏食に悩んでいるママやパパはたくさんいます。
でも、無理に食べさせるだけが方法ではありません。
• 味やにおいに敏感
• 食べた時の嫌な記憶
• 見た目の印象
• 食卓での緊張感
「嫌い」には、必ず背景があります。
それを一緒に紐解いていくことで、
「食べられた!」の扉が少しずつ開いていきます。
食べることも、子どもにとっては経験のひとつ
今回の出来事を通して、あらためて感じました。
子どもたちは、経験を通して変わっていく。
無理やり食べさせるのではなく、
ちょっとしたきっかけや、
仲間の存在、
楽しい雰囲気が大きな力になります。
「食べること」も、その子なりの成長の一部。
一歩踏み出した時の笑顔や、
「できた!」の達成感を、
これからも大切にしていきたいと思います。
スタッフ:山元あき